Seasonal Journey 〜Invitation for scent〜

無限の広がり。チョコレートの香りほろ苦く甘いカカオの話し

2016.01.15

スウィートな香りをたどる旅

街中あちらこちらにショコラの文字がおどりはじめ、スウィートな空気に包まれる2月。バレンタインの習慣が根づいてもう長い。宝石のように美しいチョコレート、手作りの素朴なチョコ、いまでは欠かすことのできない冬の風物詩だ。あの甘い時間、考えるだけで幸せな気持ちになってくる。そんなスウィートな香りをたどる旅、どんな出会いが待っているのだろうか。

カカオ豆から一枚のチョコレートまで

「Bean to Bar」それは、カカオ豆から1枚のチョコレートまで、カカオ豆がもつ本来の味わいをいかしたチョコレートづくり。にわかにそのファンを増やすこだわりの製法をご存知だろうか。少し前までは原料の調達などが難しく、大きな企業が生産することが一般的だったチョコレート。原料となるのは熱帯地域が原産の“カカオ”の種子、カカオ豆だ。このカカオ豆の選別から焙煎、テンパリングなど、多くの工程を一貫して行うチョコレート作りが「Bean to Bar」。作り手の個性がでるこだわりの製法だ。

チョコレートと出会う

まだ桜のつぼみかたい1月。小さな店内では時間をかけて一枚のチョコレートが作られていた。「12時間以上を費やす“コンチング”という作業の最中なんですよ。石臼状の機械でカカオ豆を挽いて練り上げる。この工程がね、カカオの香りを引き立て、なめらかな舌ざわりを生みだしてくれるんですよ」。そう教えてくださるのはベンチーニーの宮本秀樹さん。写真家としての活動ののち、あらたな活動の場を求め菓子作りを学んだ。イタリアはフィレンツェのアンドレア・ベンチーニ氏に師事。ヨーロッパの地方菓子づくりに励んだというが、チョコレートづくりへの転機が訪れる。「学んでみて気づいたのですが、やはりその土地の気候や産物で作るからこそ、土地の伝統菓子ができるんですね。それを日本でやるのは難しくて。そんなことで迷っている時期に、ニューヨークのマストブラザーズがつくるチョコレートに出会いました」。マストブラザーズは「Bean to Bar」の先駆け。彼らの生み出すこだわりの仕事、その姿に憧れはじめたチョコレート作り。あっという間に魅了された。

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コンチングが行われている作業場には優しく甘い香りが漂う。「この仕事を始めた時に一番衝撃を受けたのが香りですね。カカオ豆を焙煎したときに感じた香り、それがすごくおもしろいと感じたことを覚えています」。

夢中になれるものを探していた。かっこよくて、夢中になれることだったらどんなことでもやってみたかった。チョコレートづくりとはそんなときに出会えたから続けられている。「製造の現場は、時間的にも体力的にも辛いことがありますが、それを忘れさせる程の喜びや人との出会いがある。一生懸命だとか努力だとかを自分自身に課するのは好きじゃないです。だって、楽しんで夢中になれば自然とそうなりますよね。人生を楽しみ尽くす。いつもそんな気持ちでいたいです」。

香りあふれるカカオ

カカオ豆は種類や産地、とれた年によっても味が変わる。ナッツ系、フルーツ系、ウッディ、リカーそんなアロマをそれぞれがもっている。「Bean to Bar」のチョコレートに使われる原料は三つだけ。カカオ豆とカカオバター、きび砂糖。その味わいは慣れ親しんだチョコレートとはひと味もふた味も違う。アップルシナモンの味わいを思わせる1枚をいただいた。まさか、と思い一粒口に入れると、フルーティな香りのあとにシナモンのスパイシーさが鼻にぬける。こんなにも複雑な味わいがカカオ豆ときび砂糖だけで……たった一口でチョコレートの概念がかわった。紅茶の苦みをもつもの、ナッツの香ばしさをもつもの、バナナのような濃厚な雰囲気。一粒ごとに口の中に香りが躍りだす。豆がもつ個性や風味が彼の手によって引き出され、表現されている。驚きとともに、人々を魅了するカカオ豆そのものの力を感じた。

無限の広がり

「カカオ豆の香りや個性を生かしていくことができれば、チョコレートづくりは無限ですね。」そう語る宮本さん。これからは量産も視野にいれて活動の幅を広げていきたいという。人生を楽しむこと、それを実現することから始まったチョコレートづくり。ほろ苦く甘さの少ない種類もある。酸いも甘いも兼ねそなえたその一枚のチョコレート。彼が生み出す次なる一枚にはどんな風味を感じるのだろう。香りで楽しむチョコレート、そんなひとときも至福の時間になりそうだ。

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