lisn to MUSIC

音楽と香り。それは日常にさまざまな形であふれているが、どちらも敏感に感じなければ深くふれあうことはできない。
しかし、ひとたび感じることができれば、心に潤いと活力をあたえてくれるもの。
音楽も香りもその感じ方は「聞く」と表現される。
感覚を研ぎすませて香りを感じること、心を大きく開いて音楽に耳をすますこと。
“Lisn to MUSIC”は、暮らしの中で「聞く」ことを大切にしているリスナーに向けたwebコラム。
リスンとアーティストが出会い、そこから生まれるストーリー。
第二回のゲストは、jizueのみなさんです。

躍動する音に込める彼らの思い

2015.01.15

jizue

目の前にふらりと現れた、ごく自然体で飾らない人たち。彼らの奏でる、力強くもリリカルな楽曲から想像していたイメージとは異なり、そこには同じ目線に立って話す4人の姿があった。各々に香りを手にし、楽しそうに過ごすjizueのみなさんの心に耳をかたむける。
jizueは井上典政さん(ギター)、山田剛さん(ベース)、粉川心さん(ドラム)、片木希依さん(ピアノ)によるインストゥルメンタルのバンド。2006年に結成され8年のキャリアを持つ。2014年には4枚目のオリジナルアルバム『shiori』をリリースし、年間50本ものライブを行った。「ライブをしていることが何よりも楽しいです」と話してくれたのはギターの井上さん。「音楽の専門学校へ通ってレコーディングエンジニアを目指している中で、自分たちのバンドを持つことになったんです。最初は遊び半分だったけど、段々と自分ももっとうまくなりたい、表に立ってやってみたいと思うようになって」。小学校からずっと一緒という山田さんと粉川さん、井上さんでjizueを結成。初期jizueとして活動ののち片木さんが加入して、今の4人編成になった。

シンクロする音楽と人々

年間数十本のライブを行うという彼らに、好きな“場所”をたずねた。「カナダ」と、すかさず返してくれたのは、ドラムの粉川さん。jizueにとって大きな一歩となったという、2014年のカナダの三都市ツアー。日本のオーディエンスとは違った反応を楽しむことができたという。またアルバム『shiori』に収録されている『真黒 feat. Shing02』では彼の音楽活動をする上での夢でもあった、Shing02さんとのコラボレーションも果たした。“真黒(シンクロ)”というタイトルは彼らの曲の中ではめずらしく漢字を使ったものだ。字から得られるイメージは漆黒、そして宇宙などだが、もちろんシンクロニシティという意味合いが含まれる。

ピアノとの出会いやフィーリングもその場所ごとに異なると、片木さんは教えてくれた。「ピアノってひとつひとつに性格や音色の違いや相性があって、そのなかでも、神戸でのライブで出会ったグランドピアノが本当に大好き。音色もホールとの響きもすばらしくて、弾けるだけで幸せを感じます」と本当にうれしそうに話す。彼女のピアノは力強さと女性らしい端麗な旋律で聞く人の心を捕らえる。「ただいまと言える大切な場所が2カ所3カ所と増えていくことが嬉しい。それに会う人会う人がみんないい方ばかりで本当にありがたい」彼ら四人は、実感をこめて話す。楽器や場所、人がシンクロすること。お客さんやスタッフはもちろん、携わる人みんな、出会う人たちに支えられていることを感じ、そしてそこへまた戻ってこられることの嬉しを感じて日本全国を巡っている。

感情を動かす音楽

jizueの曲には、さわやかな風が吹き渡るようなものから、溢れる気迫が伝わってくるようなものまで、さまざま。一曲一曲の世界に耳を澄ませ、わたしたちは想像をふくらませる。言葉のない曲たちに、聞く人それぞれのストーリーが綴られる。記憶に刻まれる彼らの音楽はどのようにして生まれるのだろうか。
『SAKURA』とう曲はjizueにとって、はじまりの曲。今のjizueの前身となる時代からの曲を、ピアノを加えて一番はじめに4人で作ったという。今でも思い入れが深く、ライブのアンコールには欠かせない曲だ。「忘れたくないことを曲に込めて残しています」井上さんにとって、忘れたくないできごとや感情が曲に姿をかえて残っていく。これは誰にでもできることではなく、そうしてカタチにできる人の方が少ない。強い思いと衝動があり、努力を続けた人にしかできないことなのだろう。そんな背景があるから、彼らが作り演奏する曲というものがわたしたちの記憶に残り、感情を突き動かしていくのだ。山田さんの曲づくりでは、奏でたいテーマが先に決まることが多い。メロディは、メンバー4人でそのイメージにあうように完成させる。『sister』という曲は山田さんの家族がふえた時の曲。とても優しく穏やかな調べが、家族の姿を想像させる。ピアノの、優しくも凛とした音色が印象的だ。彼の思いに他のメンバーの気持ちが重なる。

積み重ねていくことで伝えられること

jizueの4人は、四者四様。ひとりひとりが自然体で、それが彼ららしさなのだろうと感じる。飾らずに自然体。彼らが話し出すと、会話にリズムが生まれ知らぬ間に聞いているこちらまで楽しくなっている。片木さんや井上さんが話せばそれは曲をリードするピアノとギターのメロディのようだし、山田さんと粉川さんが語ればそれは芯のとおったベースやドラムのリズムのよう。心さんはインタビュー中、ほかのメンバーの話すことを聞く側にいたが、あとからインタビュー中にあった話のエピソードを彼の言葉でこっそり聞かせてくれた。それがとても自然なふるまいで、そっとそばに寄り添うような空気がjizueというバンドなのだろう、と。

2014年にはアルバム『shiori』をリリース、そして2015年は、時間をかけて曲作りにはげむ年にするという彼らに、“聞く”ということについてたずねてみた。「自分たちの音楽で聞いている人の暮らしを幸せにしてあげたいとか、そうすることで自分が嬉しいとかということでは全然なくて、むしろ聞いてくれる人たちに支えられていることをすごく感じます。自分たちが発信したものに出会ってくれて、感じてくれることで自分自身が幸せにさせてもらっている」と、山田さん。
ラジオDJとしても活躍する片木さんは、jizueの音楽にこめる思いを話す。「音楽は衣食住には関わらないし、なくても毎日は過ぎ去っていく。でもずっと続けて積み重ねていくことで、そこに作り手のエネルギーが込められる。jizue4人のスタンスや思いはそれぞれだけど、4人で生み出したものが誰か他の人へ伝わって、聞いてくれた人の背中をふっと押せたり、日々をすこしでも華やかにできたらそれが嬉しいですね」



インタビュー中に4人が口にする〈人〉に対する気持ちや言葉。それが楽曲やライブにも込められているから、わたしたちの心にも伝わる、響く。エネルギーに溢れる彼らのパフォーマンスと、自然な姿。音楽も香りも生活になくてはならないものではない。でも、ほんの少し耳を傾ければ、思いがけず心あたたまる情景に会えたり、そこに込められた思いに触れることができる。
jizueに出会い、音楽に込められる人の心に思いを馳せることができた。次の、彼らの楽曲との出会いの瞬間を楽しみに待ちたい。

Artist Profile アーティストプロフィール

jizue

jizue

2006年、井上典政、山田剛、粉川心を中心に結成、翌年より片木希依が加入。
ロックや、ハードコアに影響を受けた魂を揺さぶるような力強さ、ジャズの持つスウィング感、叙情的な旋律が絶妙なバランスで混ざり合ったサウンド で、地元京都を中心に人気を高め、『FUJI ROCKFESTIVAL 2012』、『GREENROOMFESTIVAL’14』といった大型フェスにも出演するなど、全国各地でその圧倒的な演奏力で高い評価を得ている。
これまでに『Bookshelf』、『novel』、『journal』の3枚のフルアルバムを発表し、そのどれもがロングセラーを記録。
2014年5月に行ったカナダツアーも各地で大成功をおさめ、8月6日には4枚目となるフルアルバム『shiori』をリリース。

▶jizue official website

Discography
『Bookshelf』(neutralnine records)2010年7月
『Chaser / Sun』(bud music, inc.)2011年12月
『novel』(bud music, inc.)2012年5月
『Journal』(bud music, inc.)2013年6月
『shiori』(bud music, inc.)2014年8月

【これからのライブ】

■2015年3月1日(日)  jizue×fox capture plan  @ METRO
▶チケット・詳細はこちら

◇会場/▶METRO
京都市左京区川端丸太町下ル 京阪神宮丸太町駅2番出口恵比須ビルBF
Tel 075-752-4765
◇open/18:00 ◇ start/19:00
◇adv/3000yen ◇ door/3500yen
※ご入場の際、別途ドリンク代が必要となります。

◇Live/ jizue
◇Guest / fox capture plan

主催・企画制作 : bud music, inc. / Playwright
協力 : YUMEBANCHI

shiori

shiori [2014.8.6]