lisn to MUSIC

音楽と香り。それは日常にさまざまな形であふれているが、どちらも敏感に感じなければ深くふれあうことはできない。
しかし、ひとたび感じることができれば、心に潤いと活力をあたえてくれるもの。
音楽も香りもその感じ方は「聞く」と表現される。
感覚を研ぎすませて香りを感じること、心を大きく開いて音楽に耳をすますこと。
“Lisn to MUSIC”は、暮らしの中で「聞く」ことを大切にしているリスナーに向けたwebコラム。
リスンとアーティストが出会い、そこから生まれるストーリー。
第七回のゲストは、10-FEETのTAKUMAさん。2回にわたりお届けします。

思いを誰かとともにする音楽と香り

2016.06.17

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10-FEET TAKUMA

日本のロック界を牽引する存在であり、自身主宰のフェス「京都大作戦」は京都、いや日本の夏の風物詩として定着している京都出身のスリーピースバンド
10-FEET。人々を魅了する激しいライブパフォーマンスと、私たちと同じ目線に立ち発せられる、どこか寂しげで切なくなるような言葉。その狭間にある彼らの思いをヴォーカル/ギターのTAKUMAさんにうかがった。

普段からリスンの香りを楽しんでくださっているというTAKUMAさん。地元京都での学生時代の話から、香りや音楽が当時のことを思い出させるという話題へ。リスンの香りがもつ力を「スペース」という言葉で表現してくれた。
「音楽もそうですけど、香りは、景色や思い出、季節感を頭と心にイメージさせてくれる瞬発力があるというか、内側にあるものを引き出してくれますよね。インセンスでも、香りの中にスペースというか余白があって。そこに、ふっと自分の気持ちや思い出、景色がはまるような気がして好きなんです。ローズやキンモクセイなど、多くの人がインセンスにして欲しいと思うもの以外にも、いい香りってあるじゃないですか。それらは微々たる差ですけど、香りとなり嗅覚に入ってくるとその差は大きい。少しの差で思い浮かぶ映像は違うし。それを探せるのが楽しいですよね」。

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小さな違いに気づき、それを大切にしてくれる、繊細な一面。それでいてフランクに話してくださる姿からは、私たちに心を開かせる広くあたたかい人柄が感じられた。
「リスンの香りは、心のスペース、ニュートラルな部分を大事にしたうえで感じさせてくれる。僕なりの考えなんですけど、みかんの香りを表現しようとすると、みかん以上の香りを表現しがちだと思うんです。でもそうではなくて、それぞれが感じているみかん感を活かしてくれる、みたいな(笑)。わかりやすくするんじゃなくて、なんか分からないけどいいなって思わせてくれるところが好きなんですよね」。そう話してくれるTAKUMAさんが作る曲や詩は、まさしく私たちにとってそういう存在だ。
「集中という言葉はストイックなイメージですけど、集中する為に必要な“リラックス”があると思うんです。香りには、前だけではなくて、横も見えるような状況を作ってくれる気がしています。僕は曲づくりの時に、前しか見えなくなることが多くて、あとから見直すと夜中に書いた手紙みたいに、ちょっとやりすぎた、too muchだったって思う時があって。香りはその辺のミスをなくす、いい集中力にできると思っています。余韻の香りも含めて、家の作曲する部屋ではインセンスをつかっています」。

誰かに思いを共有してほしいときにあう香りが多いから、すごく音楽的だなって。

普段から描きたいテーマを書き留めているというTAKUMAさん。楽曲が生まれる時とは、いったいどんな時なのだろうか。

「曲はね……すごく楽しいとき、すごく悲しいとき、怒っているとき、あとは、“書かなくちゃいけない”というときにも力が湧いてきます。僕、歌や曲っていうのは、悲しいときにできるというか、そういう感情が元で歌は生まれたんじゃないかと思うくらい、悲しいとき寂しいときに浮かぶことが多いんです。それ以外のときでも、悲しいこと寂しいことを思い出して書くことが多いですし。人が元気を出したり救われる瞬間は、自分と同じ悲しいものに寄り添ってもらった瞬間、ということが大いにあると思うんですよね。だから、元気出せよって言ってもらうのがいい時もあるけど、それ分かるわぁって、悲しみを共有してくれる人に、ただただ今日は淡々と飲もうって言ってもらう方がいい時もあるし、怒ってくれる方が楽なときもあって……」。

そう話してくれたあとに、TAKUMAさんは香りのことに触れてくれた。「そういう意味でも、インセンスはハッピーとか優しいだけじゃなく、切なさ寂しさを感じさせてくれる部分もあって。自分のいる場所より上からや、明るいところからではなく、同じ場所で誰かに思いを共有してほしいときにあう香りが多いから、すごく音楽的だなって。僕はプレイヤーだからそんな目線で見ていますね」。
音楽も間違いなく私たちと同じ目線にたち、時に励まし、時に共感してくれ、いつでも寄り添ってくれている。同じ思いを歌の中に見つけることで救われる時がある。歌がそうであるように、香りもそんな存在でありたいと、彼の言葉から気持ちを新たにする。

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悲しいことをカラッとした音楽で聞かせることができたら、一番いい。

「音楽とインセンスという違いだけで、やっていることは同じかなって思います。細かい部分の描写って実は中核的なことで、悲しみを歌った歌を聴いてもらうために、テンションの高い曲でアホなことを歌ったり。興味のなかった人に興味を抱かせるような。インセンスも、店内のレイアウトや、近づいてみないとわからないような小さくて可愛いデザインであったり、香りとは離れているけど、香りを伝える為にはどんな面からでも興味を持ってもらいたいし、かといって広告を打つのでは繊細さが伝わらないし。音楽でも、悲しいしっとりしたことをカラッとしたドライな音楽で聴かせることができたら、一番いい。そしてこの音楽を聴いた人が、そんな悲しみや寂しさを歌っている音楽も好きになってくれたら、ものすごく素晴らしいことだなって」。

>>後編へ続く

Artist Profile アーティストプロフィール

10-FEET

10-FEET

LtoR
KOUICHI(Dr./Cho.)
TAKUMA(Vo./Gt.)
NAOKI(Ba./Vo.)

シンプルな3ピースという形態でありながら、メロコアと言うジャンルでは既に括る事のできない音楽性は、ROCK、PUNK、HEAVY METAL、REGGAE、HIP HOP、GUITAR POP、BOSSA NOVA等のジャンルを10-FEET流に取り入れ、幅広い独自のものを確立している。
また年間100本近い精力的なライブ活動も、その迫力満載のライブパフォーマンス、人間味溢れる、深いメッセージが込められた歌詞、笑顔を誘い出すキャラクターで常に話題を振りまいている。 エンターテイナー性溢れるその活動スタイルを徹底している。
さらにその活動は日本はもとより、アメリカツアー、韓国、台湾でもライブを行い、音楽の力で国境を越える事ができる日本では数少ないバンドである。
また、2007年から自身で主催する野外フェス「京都大作戦」も大成功におさめている。

▶︎10-FEET official web site

▶︎NEW RELEASE
『アンテナラスト』2016.7.20 on sale
M-1, アンテナラスト
M-2, skatting
M-3, BombBass Kinny

▶︎京都大作戦 2016 〜吸収年!栄養満点!音のお野祭!〜 official web site

アンテナラスト

アンテナラスト [2016.7.20]