lisn to MUSIC

音楽と香り。それは日常にさまざまな形であふれているが、どちらも敏感に感じなければ深くふれあうことはできない。
しかし、ひとたび感じることができれば、心に潤いと活力をあたえてくれるもの。
音楽も香りもその感じ方は「聞く」と表現される。
感覚を研ぎすませて香りを感じること、心を大きく開いて音楽に耳をすますこと。
“Lisn to MUSIC”は、暮らしの中で「聞く」ことを大切にしているリスナーに向けたwebコラム。
リスンとアーティストが出会い、そこから生まれるストーリー。
第六回のゲストは、Michelle Michinaさんです。

音と言葉に吹き込まれる息吹

2016.02.25

Michelle Michina

ピアノの音色に彼女の歌声が重なり、聞く人の心を揺らす。フランス語の歌詞が心地よい。アップテンポの曲からブルージーなナンバーまでを歌い上げるシンガー・ソングライター、ミシェル・ミチナ。彼女の歌声に耳をすます夜はゆっくりと過ぎていく。歌声、楽曲そのものが呼吸をするようで、聞いていて力がわいてくる。

ミシェル・ミチナさんはフランスと日本を故郷にするピアニストでシンガー・ソングライター。2015年3月に世界デジタルリリース、同11月25日には日本盤ボーナストラックが収録されたアルバム『息吹〜Le Souffle〜』をリリース。力強く歌う姿とはちがい、気さくに香りを楽しむ姿が印象的だ。多様な文化や言葉、感性をもった彼女の言葉に耳を傾ける。

音楽への道

13歳までを日本で過ごしたというミシェルさん。音楽の授業で歌うことが楽しく、パリに移ってからは音楽の授業がなくて寂しかったと振り返る。ピアノは幼い頃から習っていたという彼女、音楽をはじめたきっかけを聞いた。「母が子供の頃にピアノを習っていたということもあって、私も習い始めました。その頃は全然まじめな生徒じゃなかったと思います。でもどうにか続けることができて。だから音楽を始めたきっかけは母とも言えますね」。多感な時期を日本とフランス両方で過ごしたのち、フランスの大学へと進む。そこで音楽の道へと進む決心を固めることとなった。「大学の周りの友人は〈やりたいこと〉がない人が多かったんですね。そんな中で、改めて自分には〈やりたいこと〉があるとはっきりしたというか。長年忘れていましたが、ステージの上に立ちたいという小さな頃の夢もあったなって。それで2ヶ月で大学は辞めてしまいました」。

息吹

広がりだした音楽への道。「自分に自信を与えてくれた人」と表するLaurence Apithy(ローレンス・アピティー)に師事、ピアノと作曲を学んだ。「歌を歌いたいのならピアノを学び、自ら曲を生み出すこと、そう言われたことを覚えています」。それまでは才能のある人のみがなし得ることと思っていた作曲。それが身近になり、自分を表現する方法であることに気づいたという。「テクニックではなくどう自分で表現するかを学んだ場所。ここで教えてもらうことが本物なんだ、と感じたスタート地点です。先生との出会いまで時間はかかりましたが、結果として大きな転機となりました」。



自然と音楽を仕事にできたわけではない。やると決めてから長い道のりを経た。「ミュージシャンの家庭に生まれ育ったわけでもないし、環境やチャンスを得ることはすごく難しかった。ゼロから始めるって大変なんだー!って。でもその分、勉強もたくさんさせてもらいました。」そう振り返る。アルバムのリリースまで歩んだ道のりこそが彼女の力となり、生み出された1曲1曲に息吹が込められていったのだろう。

聞く力を鍛える

作曲すること、言葉を紡ぐことで思いを表現するミシェルさんにとって“聞く”とはどんな意味を持つのだろうか。深く考えながら答えてくれた。「考え方がオープンでないと聞くことはできないと思います。ただ聞こえているのと、本当に聞いているのとは違いますよね。そうかと思えば、何気なく聞いている時にハッと気づけることもあったり。聞くって難しいですね」。はじめてのアルバム制作の中で、細かな音を聞いたり全体のバランスを聞いたりと、必死に自らの音楽を聞いたというミシェルさん。「聞く姿勢や場所、聞き方を変えることでわかることもありました。聞く力が鍛えられるのを感じましたね」。素直に受け入れる姿勢から“聞こえる”こと、すこし離れることでふっと“聞こえた”こと。さまざまな言葉で織り成された彼女の作品も、私たちがそれぞれのスタイルで“聞く”ことで、その真価を感じることができるのだろう。香りもまた同じ。聞く人の環境や心が感じ方に無限の広がりをもたらすのだ。

日本で始まるツアーについて語ってくれた。「バンドメンバーを連れてのツアーになるのでプレッシャーもあります。だけど、やれるぞ!ってワクワクもしています。お客様に、一瞬でも日常を忘れて楽しんでもらえる空間作りをしたいし、パワーをあげたい。自分を見てほしいということじゃなくて、何かをあげられるようなアーティストになりたいですね」。そう語る彼女の姿は生き生きとしていた。

音楽と香りを暮らしのささやかな楽しみに

彼女が感じ、経験したことに音と言葉が響き合い、息吹が吹き込まれる。常に新鮮でありたい、そう願う彼女自身の思いがこれからも多くの音と言葉に息吹を吹き込み、新たな作品たちが輝きだすのであろう。目には見えない歌声や香り。そこに込められた思いを感じとることに、暮らしのささやかな楽しみを見いだしていく。彼女の歌声に心揺さぶられる日々を楽しみたい。

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Artist Profile アーティストプロフィール

Michelle Michina ミシェル・ミチナ

Michelle Michina ミシェル・ミチナ

千葉県で日本人の父とフランス人の母のもとに生まれる。
中学校まで東京で過ごし、13歳のときにパリへ。
19歳でBlack Music SchoolにてLaurence Apithyに師事し、ピアノと歌を学ぶ。
そして、2007年にギタリスト前田智洋と出会い、Michina&Tomo(ミチナ・エ・トモ)を結成。
2010年2月にファーストマキシアルバム「Premier Souffle(プルミエ・スーフル)」を発売。その後、一ヶ月にわたる2度の日本ツアーを行ない、MJTVをはじめテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等、数々のメディアにて紹介される。
2011年よりソロ活動をスタートさせ、2013年にマイヤ・バルーのバンドにバックヴォーカリストとして参加。
2014年に12曲収録のソロアルバム「Le Souffle(ル・スーフル)」が完成。
2015年3月28日にCD発売に先駆けて、ソロアルバム「Le Souffle(ル・スーフル)」がiTunesで音楽配信された。
2015年8月2日にJabup Records(日本)より、フランス盤「Le Souffle」を全国発売。
2015年10月1日に都内で行われた、トヨタ新型クラウンの報道発表会にシンガー・ソングライターとして出席。
2015年11月にフランスの自動車メーカー、プジョーの新CMに歌手として起用される。
2015年11月19日から約2週間にわたり、日本盤発売に合わせて来日し、
インストアライブを中心にラジオ出演等の全国プロモーションツアー2015を行った。
2015年11月25日にJabup Records(日本)より、日本盤「息吹 Le Souffle」を全国発売。
2016年3月4日から全国8会場(京都、神戸、高松、広島、熊本、大分、福岡、東京)を回る、ミシェル・ミチナ・トリオ ツアー2016「息吹」開催決定。

▶︎ミシェル・ミチナ Official Web Site
▶︎ライブインフォメーション

息吹 Le Souffle

息吹 Le Souffle [2015.11.25]