香りノート

SMOKE TONE 04 おだやかに苦く

2016.09.01

2016年インセンスコレクション「SMOKE TONE」 香りノートでは、陶芸家 三笘修さんをご紹介します。
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はいこひき(灰粉引)、わらじろ(藁白)、さびじろ(錆白)、げんゆう(玄釉)。素焼きの器に色と艶をあたえ景色を描き出す釉薬。その原料は様々で、調合の加減、焼きの時間や温度によって、あらわれてくる色は無限。三笘修さんの表現する色は侘びていて趣がある。この風合いに魅了されたファンも多いことだろう。今回は、三笘さんに釉薬についてお話をうかがった。


「実は造形っていうのは苦手で......。釉薬のテストをする時が一番楽しいんですけど、色を作ってからそれに合う形をイメージすることが多いですね。この色に合う形はどんな物だろうって。ミュージシャンが作詞と作曲どちらからやるか、みたいな話しなんですけど。机の上に並べたテストピースを眺めながら成型したり、植物や古い器から色や形のヒントをもらうこともありますよ」。今の作風になるきっかけは植物の灰から作った釉薬だった(▷SMOKE TONE 01)という。三笘さんの器は、ろくろを使わずに成型される。土をこね薄くスライスした粘土を石膏の型に入れて成型したり、手捻りや削り出しという手法で形を作り、素焼きする。そして、その素焼きした器に釉薬をかけ、本焼きして完成となる。作品作りの始まりは原料探し、と三笘さんはいう。


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note_st04_2-3.jpg「釉薬は、山からとってきた花こう岩を杵と臼で粉末にして、灰と混ぜます。この灰も、梅の木の薪をストーブで使ってできた灰や、藁をもらってきて灰にしたもの。簡単に言うと、この石を砕いた粉と灰を混ぜて、水に溶いたものが釉薬ですね」。作品の中でも三笘さんの「色」として代表的なのが灰粉引。すこし黄味がかった白色に、ところどころ鉄分の赤色がでている。日田の大山に越してくる前から大切にしている色だそうで、植物の灰から作られる色だ。継ぎ足し継ぎ足し使っているうちに今の風合いが出てきたという。実際に手でかき混ぜるときの感覚で濃度をはかっているそうだ。


note_st04_3.jpgそして、この灰粉引とは対照的に目を引く青釉。自然の産物からの色作りに個性を見出した頃、ふと、自然とは離れ意識的に作りたいと思い作り出した色だという。カワセミのような鮮やかな青は三笘さんの作品の中でも目を引く存在だ。「日田もの、自然のもだけで作るということにこだわりすぎずに、暮らしの延長線上にうつわを作っていくことが理想ですね」。
小さな器にあらわれた色。それぞれの表情を楽しみ慈しんでほしい。


次号(最終回)......SMOKE TONE に寄せて/三笘修さん寄稿


ST04_note.jpg作品のコト〈9月 おだやかに苦く〉

季節は秋へ。次第に落ち着いていく自然の色と香りと。


香り:おだやかに苦い焙煎豆の香り。

器:ベーストレイは黄石釉(おうせきゆう)。
インセンストレイは鉄黒釉(てつぐろゆう)、ケースは錆釉(さびゆう)。三つの形と色で次第に深まる秋を表現しています。



三笘さんのコトバ

「全体的に落ち着いた色合いで秋を表現しました。山々が色づき、次第に葉が落ち、植物や生き物たちが眠りにつく準備を始めます。季節は「動から静へ」そんな静寂の空間を表現しました。」


2016年インセンスコレクション SMOKE TONE

一つ一つ、土が焼けて形ができあがる。いろいろな色は大地から、木々から......

自然のささやきが色となって現れる。ならば、そこに香りを感じることはできないか。

煙とともにできあがる陶土の器、煙となる香り。器の声、香りの音を届けます。

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