BREATHING TREES
2024.07.16
樹々やそれらが育つ環境にフォーカスを当てたインセンスシリーズ、BREATHING TREES。
香りノートでは、本シリーズでテーマとなった4種類の樹についてお話していきます。
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まず1つ目はスギ。日本各地に生えているスギは、みなさんにも馴染みのある木ではないでしょうか。約300万年前に地球上に現れ、広く分布していましたが、繰り返される環境変化のなかで生育場所を変えながら、今では日本列島など限られた地域に生き残ったとされています。
そんなスギは日本でもっとも大きく、もっとも長寿の木です。縄文杉をはじめとした樹高50m以上、樹齢数千年のスギがいくつか存在しています。
思わず見上げてしまうほど、大きく成長するスギ。移りゆく時代を眺めてきた樹がつくる神秘的な森を、ウッディにゼラニウムなどのグリーンを合わせることで表現しています。
▶︎346 BEGINNING
そして、スギと同じくらい日本の針葉樹の代表格であるヒノキ。見た目はスギと似ていますが、スギの尖った葉に対しヒノキの葉はうろこ状で、裏側にY字形の白い気孔線があるのが特徴です。加工しやすい上に耐久度が高く、長年強度が落ちないことから、世界最高の木材と言われています。そのため桶や浴槽など日常的に使用するもののほか、法隆寺や東大寺など歴史的な寺院の随所にもヒノキが使われており、現在まで残っています。
寺社のような特別なものから、桶や浴槽など日常的なものまで幅広い場面で使われるヒノキは、私たちの周りをほっと包み込んでくれるようなあたたかさを感じられます。アンバーやミルキーさを合わせることでその温もりを表現しました。
▶︎347 CYCLE
3つ目はクスノキです。クスノキと聞くと、どっしりとした太い幹に、大きく広がる枝葉が思い浮かびます。樹齢数百年から千年以上、直径3〜5mに達する木も現存しており、まさしく巨木といった姿に、御神木として崇められていることも多い木です。大きな材がとれ、耐久性に優れて虫にも強いことから、社寺や和風建築、仏像や木魚などにも用いられていました。
リスンでは、大きくのびのびと成長していくクスノキのたくましい姿を、漢薬香料にフローラルやモスを合わせることで表現しました。
▶︎348 WAITING
最後はヒバ。ヒバとは総称で、本州から九州の広い地域に分布するアスナロと、北海道南部から本州北部に分布する変種のヒノキアスナロの2種類があります。ヒノキと比べてもほとんど遜色ないといわれるほど、その材は木目が詰まっていて表面も緻密です。その理由は成長がゆるやかだから。その分、若い時代は暗い林の中でも育っていける特性を持っています。成長したヒバは高さ20〜30m、直径1m前後になる木もあります。
日の当たらない林の中で生まれ、太陽の光を目指してゆっくりと育つヒバ。清涼感のあるグリーンにカシスやオレンジを合わせることで、ヒバの凜とした姿を表しています。
言葉を発しない樹々の静かな息吹から広がる世界。
少しだけ意識を向けて彼らの営みに耳を傾けてみると、新たな発見があるかもしれません。
インセンスを通してその世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
『万葉植物文化誌』2010年
『種類・特徴から材質・用途までわかる樹木と木材の図鑑』2016年